創業70年山の麓にある食堂が使い続ける亀の子束子

亀の子束子をご愛用あるいは支えて頂いている皆さまのもとを訪れて、さまざまなお話を伺う「亀の子訪問記」。
今回は「日本三大修験山」の一つ、福岡県の英彦山(ひこさん)にあるヤマメ・鯉料理「駒どり」さんにお邪魔しました。

小さな田舎町で愛される「駒どり」食堂

お話を伺ったのは2代目店主の早戸秀喜さん。
早戸さんが生まれた日に、先代の父:駒男さんの「駒」と母:トリさんの名前を取って「駒どり」がはじまりました。
博多駅から電車とバスを3回乗り換え、彦山駅に到着。
駅の正面に構える「駒どり」さんのランチタイムは、常連のお客さんでにぎわいます。
「大将~、いつもの鯉定食ね。」早速一人、二人来店されるお客様は、お店に入ってくると同時に注文されていきます。
中には「お、今日はいなりがあるの?じゃあ、うどんといなりね。うどんは肉でも何でもいいよ」と厨房をのぞき込み注文される常連さんも。
日によって、早戸さんがオリジナルメニューを作っているそうで、常連のお客様もそれを楽しみにされているようです。
「いつも同じメニューじゃお客さんも飽きるでしょう?せっかく来てくれたんだから、家庭の味として小鉢とか何か一品は必ず入れるんですよ」
「こんな田舎じゃ、なかなか商売続けるのも大変ですからまた来てもらえるように、また食べたいと思ってもらえる料理を出さないと」
そう説明して下さった後、早戸さんは持ち帰り用のパックに作りたての料理を詰め始めました。
来店されたお客様にふるまうだけでなく、近くに住む知り合いのお年寄りの方の様子をうかがうついでに、その日作った料理を差し入れされているとのこと。
「お年寄りが一人で住んでいる家がほとんどなので、みんなで協力して助け合うんです」
今回取材させて頂く中で度々、地域の方々が身内のようにお互いのことを気遣い合う姿を拝見する機会があり、とても印象的でした。

     

おかずをパックに詰め込んだ後、手際よく鯉をさばき始めました。あっという間に「鯉のあらい」の出来上がり。
お客様の好みに合わせてコリコリと歯ごたえのある皮をつけて提供するそうです。
初めて来店された男性のお客様にも気さくに話しかけ
「今日は真子(鯉の卵)もあるよ、いるかい?」「ぜひお願いします、鯉の皮も初めて食べました」
とお客さんと楽しそうに会話した後、「またお待ちしとります!!」と早戸さんのよく通る明るい声が響いていました。

厨房以外でも活躍する亀の子束子

  

70年変わらない「駒どり」の厨房では、3つの洗い場に必ず亀の子束子が置かれています。
「色が薄くなったたわしは油洗い用、それ以外は右を使ってます。どれだけ使っても、亀の子さんのたわしはヘタらない!」
そう言って大きなまな板を洗いながら早戸さんは続けて、
「実は、この束子にお世話になっているのが外にもあるんですよ」と案内されたのは、食堂の目の前にある生けす。
「これを洗うには亀の子束子じゃないと話にならないんですよ、うちの生けすは山の水をそのままこの生けすに引いています。冬はそこまでないですが、暖かくなると山の藻が水と一緒にそのまま生けすに流れてくるのでマメに掃除しないと藻がびっしり張り付いて中のヤマメが見えなくなってしまいます」

     

覗いてみると水槽に流れ込む部分には、青々とした藻がついていて水槽のガラスには緑の藻でうっすらと水が緑色に見えてきています。
生けすには、365日24時間ずっと山水を流し続けていて、藻が一日で増えるので早戸さんが度々生けすを磨いているのだそうです。
この日は鯉が入っている生けすを洗うということで、藻の様子を見せて頂きました。

 

左が亀の子束子でこする前、右がこすった後。
たわしでゴシゴシこすると、藻で隠れていた水色のタイルがきれいに見えてきました。
特に石と石の溝に詰まった藻は特に取れないので、掻き出す亀の子束子は必需品なんだそうです。
山水のお話を聞いていて、一つ疑問に思いました。どうやって離れている山からこの生けすに水を運んでいるのか?
早戸さんに伺うと、快く水源に案内してくださるとのことで、彦山駅の裏にある山に行ってみることにしました。
線路を渡り、傾斜の緩い道をぐんぐんとのぼっていくと細く長いパイプが数本、山の中から伸びていました。

自然の水を使うという事

     

「お客さんに提供するので、汚染されていない自然の水で育った魚でないと。お客様に喜んでもらうためには魚が少しでも喜んだ状態がいい」
水源の条件として、上に人家がない事が必須条件なのだそうです。特にヤマメは酸欠になりやすい為、山で鍛えられて酸素を多く含んだ山水、冷たく、きれいであることが大切です。人によって汚染された水が一番よくないという事から、純粋な山水を確保できる場所を選んで、いくつもあるコンクリートの水タンクに貯水。
溜まった水の水圧を使い、長いパイプを通して、山水をお店まで届けるしくみになっていました。
この水源を先代が作り、今も守っています。
しかし、自然のものを扱うということは簡単ではありません。
例えば、枝葉がパイプに詰まって水が流れてこなくなったり、暖かくなると鹿や猪が出てきてパイプを蹴って壊してしまったりするそうです。
その度に早戸さんは、夜な夜な懐中電灯を片手に真っ暗な山を登りパイプを修理します。
なにより大変だったのは、2017年7月5日に起こった九州北部豪雨の時です。早戸さんの住む添田町も甚大な被害がありました。
守ってきた水源も土砂やなぎ倒された木々でバラバラに壊されてしまったのです。お店の再開よりも地域の復旧作業を優先し、やっとお店に戻った頃には、水は供給されておらず、生けすのヤマメと鯉は皆死んでいたそうです。
地域の復興と、水源の復旧に日々奮闘し、ようやくお店を再開できたのは被害があった日から1週間以上たった頃でした。
「自然の水を使うのは煩わしいけれど、最低条件。そのサイクルの中で、亀の子束子は絶対必要なんです」
亀の子束子以外ない、というよりそれ以上がないんです
苦労を感じさせない笑顔を見せながら、早戸さんはそう話してくれました。

九州北部豪雨から約2年経った今も、明るくお客様を迎え地域に愛される「駒どり」さん。
そんなユーザーさんに支えられて亀の子束子も112歳。
これからも、亀の子束子を使ってくださるお客様が喜んで頂ける商品を提供していきたいと改めて励みになりました。
早戸さん、お忙しい中ご協力ありがとうございました!

『駒どり食堂』
https://hikosan.net/komadori/

     

人気のやまめ定食は、ヤマメの塩焼きと鯉こく、店主の気まぐれ小鉢が付いてきます。
その他、ヤマメ料理にはホクホクのヤマメの身と骨、頭を塩コショウだけで揚げた唐揚げや、甘くさっぱりとした刺身をお楽しみ頂けます。

     

羽黒山(山形県)・熊野大峰山(奈良県)とともに「日本三大修験山」に数えられる英彦山。
登山道を歩いていると、かつて山伏が修行した行場があちこちに見られます。
ぜひ英彦山にお越しの際は、「駒どり」さんでゆったりと川魚を味わってみてはいかがでしょうか。


登場した亀の子束子製品

亀の子束子1号
元祖「亀の子束子」。耐久性抜群で掻き出す・こすり取る洗浄が得意です。

亀の子束子3号
定番サイズの1号よりやや大きめ。握りやすい大きさで、大きな鍋や浴室等広範囲を洗うことが出来ます。